【三国志】演義と正史の違いは?

2017年4月24日

三国志を語るにおいて避けては通れないこと。それは「三国志演義(以下、演義)」と「正史三国志(以下、正史)」の違いについてです。ここを押さえておかなければ、もしかしたら恥をかくかもしれません。

【三国志】演義と正史の違いは?
【三国志】演義と正史の違いは?

三国志といえば大半が「演義」

経験上、三国志好きでも話をしていると「演義」のことを話している人が多いです。もしくはゲーム。一昔前はコーエーの「三国志」シリーズ。今であればソーシャルゲームですかね。三国志の人物名だけを使ったアニメもありました。

おそらく日本人の多くは三国志といえば「演義」のことをいうのです。

きっかけは吉川英治の三国志

まだゲームなどもなかった頃、三国志といえば吉川英治氏の小説でした。これは今なお語り継がれる名作中の名作。戦国時代や幕末は司馬遼太郎氏ですが、三国志といえば吉川英治氏だったのです。

その名作中の名作はどのようにして生まれたかというと、もとをたどれば江戸時代に書かれた「通俗三国志」だそうです。そして「通俗三国志」のもとになったのが「三国志演義」なのです。

三国志演義とは

三国志演義は後漢末期から三国時代の終わりまでを書き上げた小説です。書いたのは明時代の羅貫中という人物。

歴史小説ですが、フィクションもノンフィクションも含んだエンタメ路線の小説です。昔から「史実7割、創作3割」といわれてきました。創作部分も巧みに人物が入れ替わっていたり時期が少し違っていたりするので、もはやどこが創作なのかがわからないくらい。

僕が知る限り、映像や小説で三国志を取り上げているものは「三国志演義」がベースといえます。

主人公は蜀(劉備→諸葛亮→姜維)

舞台は後漢末期、黄巾の乱が起こり、序盤の主人公である劉備は義勇軍を集めて立ち上がるところから物語は始まります。中盤、劉備が病死すると諸葛亮。諸葛亮の死後の終盤には姜維へと主人公は変わっていきます。

最後には蜀が衰退し滅亡してしまいますが、基本的に敵役は魏であり、第三者的立場で要所に呉が登場します。この構成のせいでまだ魏のかけらもない頃から曹操は必要以上に悪役ですし、呉に至っては赤壁の戦いでも諸葛亮に翻弄され、必要以上に小さな人間たちの集まりに見えます。

主人公がいる蜀が滅亡すると、物語はあっという間に魏が晋になり、呉が滅ぼされて終わります。

正史三国志とは

正史三国志は晋の時代に陳寿によって書かれた記録です。正史は「正式な歴史書」といった意味で、必ずしも正しいわけではありません。「国家公認の歴史書」という認識で良いでしょう。正史三国志は書かれた時代が三国時代に近いことから、かなり信憑性が高い歴史書とされています。

ちなみに正史であっても信用できないものもあり、三国志の次の晋書は絶望的に信用できない資料とされています。もちろん三国志にも信用できない部分はありますが、全体的に信用できる資料とされています。

現在出回っているものは、陳寿が書いたものに裴松之が注釈を入れたものです。陳寿だけの記述ではあまりに簡略すぎる部分を他の資料から補ったもので、「演義」に採用されたエピソードも多数収録されています。

正当国家は魏

演義では蜀を主役に置いていますが、正史での正統国家は魏です。つまり漢(後漢)から禅譲を受けて、帝国としての魏が成立。その後、魏からの禅譲で晋が成立するのが現在の定説です。

もちろん蜀(正式には蜀漢)が正統であると主張する声もありますが、事実上の簒奪といっても帝位の移動は漢から魏、魏から晋となっていますから、これを否定することはできません。

優遇される蜀

とはいえ、陳寿自身はかなり蜀を優遇しています。

三国志は「紀伝体」という書き方で書かれています。簡単に書くと三国時代の人物紹介をまとめています。つまり人物伝の集まりです。

「紀」というのが皇帝の人物伝。それ以外の人物伝が「伝」ですから、合わせて紀伝体といいます。

三国志の一番最初は正統国家である魏の第一人者・曹操です。曹操は即位していないのですが、死後に武帝を諡されているので、武帝紀として書かれます。次に曹操の子で魏の文帝・曹丕の文帝紀…と続きます。

皇帝ではない人物は有名どころで言えば「関羽伝」や「諸葛亮伝」となります。ですが、劉備とその子・劉禅については「先主伝」「後主伝」となっています。呉の孫権は「孫権伝」ですから、劉備親子は特別扱いです。

なぜこうなったかというと、陳寿自身がもともと蜀に仕えていたから。正統国家である魏にとってあまりに不利なものは書けなかった事情から、歴史家としては不公平かもしれませんがどこかで一矢報いたい気持ちがあったのかもしれません。

まとめ

正史三国志は国家公認の歴史的記録文書で、三国志演義は正史をもとに書かれた時代小説。現在、三国志と認識されているものはたいてい三国志演義がベースになっている、ということになります。

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