技術的敗因を探らなければ「東京」での勝利はありえない

2017年1月6日

リオデジャネイロ五輪開催中に感じた、報道に関する疑問です。五輪開催中に書いたものを限定的に公開していましたが、あらためて公開することにしました。

技術的敗因を探らなければ「東京」での勝利はありえない image by GATAG
技術的敗因を探らなければ「東京」での勝利はありえない image by GATAG

レスリングの吉田沙保里選手が五輪での4連覇を逃した敗因を、精神面以外で誰も語らなかったのはなぜだったのか、ずっと疑問に感じていました。

NHKがいう3つの敗因は

  • 決勝の相手が想定の選手ではなかった。
  • 決勝の相手が予想以上に強かった。
  • 4連覇への重圧がすごかった。

というものでした。

2つ目までは自分ではどうしようもない問題です「想定していなかった相手が想定以上に強かった」などというのはただの言い訳にしか聞こえません。「霊長類最強」とまでいわれた吉田選手が、本当にこんなことを考えたのか疑問です。もう一つの金メダルへの重圧がすごかったというのは、本人以外誰にもわかるものではありません。

僕が知りたいのはそんなことではなく技術的なこと。かつてヤクルトや阪神、楽天の監督だった野村克也氏が「勝ちに不思議な勝ちあり、負けに不思議な負けなし」と言っていましたが、精神面以外に何かしら原因があったはずです。

そこでレスリングに関してはオリンピック以外では見ることもない素人ですが、2日間の女子レスリングを見て分析してみました。以下、の3つです。

  • この12年の間に吉田対策が着々と進んでいた
  • 前日に日本の特徴を研究された
  • 吉田選手自身の衰え

奇しくも金メダルを逃した翌日の朝日新聞に書かれていました。この12年間で防御のレベルが上った、相手のマルーリス選手は完璧な防御をしていた、と。そして吉田選手については、いなしからの組手や崩しを覚えてサイドからの攻撃も向上させた、と。

であれば、マルーリス選手は吉田選手が向上させた攻撃も全て封じたことになります。また、決勝までの動きも前日の伊調選手に比べれば、僕が見た印象でも明らかに悪かったように見えました。

前日といえば、伊調選手の五輪4連覇を含めて日本の選手3人が「終盤の逆転」で金メダルを獲得しました。この逆転劇から日本の選手の特徴が広まったといえます。「日本の選手は後半に追い込まれた状況でも練習量で培われた体力勝負で逆転する」という特徴です。

この結果、2日目には日本の選手対策として、後半に体力を温存する選手が出てきても不思議ではありません。吉田選手自身も「最後にはなんとかなると思った」と言っています。練習量に裏打ちされた自信と前日の3選手の流れから、そう思っても不思議ではありません。しかしながらマルーリス選手が後半のことを見据えて体力温存を図っていたとしたら、「なんとかなる」という想定は崩れます。

吉田選手自身の衰えについては、NHKのインタビューで自覚していたようです。それでも「一生懸命やるだけだ」と。出典:リオ五輪“最強伝説”への道 レスリング吉田沙保里 進化する“女王”

金メダルや4連覇ではなくて残念だ、とは思いません。銀メダルでも素晴らしいことです。ですが、技術的敗因を検討せずして次はありません。この論調では精神的にもっと強ければ、吉田選手は4連覇できていたということになります。五輪以降の言動などを考えるに、はっきり言って今以上に精神的に強くなれ、というのは無理があります。

朝日新聞では「結果は銀でも、実力は金」などという見出しをつけています。完璧に防御されて結果は銀なら、本当に実力が金なのかと疑問に思います。僕の知らないレスリングの世界ではそういうこともありえるのでしょうか。(このことを言ったのは、元金メダリストの佐藤満さんという方だそうです)

http://ameblo.jp/kyarypamyupamyu-sama/entry-12192122909.html

残念ながら、検索した結果、朝日新聞に該当する記事が出てきませんでした。有料会員でないと見られないのかもしれません。

また、これを書いたもう一つのきっかけですが、なんとなく吉田選手に優しい気がしたのです。これが野球やサッカーなら、見出しはもっと攻撃的。それこそ監督の采配ミスから始まり、失投、失策、消極的、貧打、盆ミスなどなどネガティブな表現が並んだはずだと。そう思いました。

残念ながら検証できそうな記事はありませんでしたが、なぜか吉田選手に対して優しい気持ちになっていたと思うのです。野球やサッカーならそうならないだろうと思われるのに。

付け加えるようですが、最初は何も朝日新聞の内容がおかしい、というつもりで書いたものではありませんでした。ただ結果的に今回の銀メダルが、試合に負けたけど内容は勝った、みたいに書かれているのは違うのではないか、というものになりました。

次の東京五輪に向かって、技術的な検証などがきちんとできて、さらなる飛躍ができることを心から願っています。

このエントリーは昨年noteで公開したものを加筆修正したものです。

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