「医療」を提供する施設の口コミサイトについて

現在、様々な業種に口コミサイトがあり、来店や購入の参考にされている方も多い。「食べログ」はその飲食店を検索すると公式サイトより上位に表示されるぐらい、口コミサイトが隆盛期を迎えていると言っても過言ではない。そんな中、とある「医療」を提供する施設の口コミサイトに関わることがあったので問題提起したい。

「医療」を提供する施設の口コミサイトについて
「医療」を提供する施設の口コミサイトについて

はじめに

名前こそ出さないが、この「医療」を提供する施設(厳密に言えば医療機関ではないが一般的にはそのように見える)の口コミサイトは近年登録施設が増え、特定の地域で検索すると上位に表示されるらしい。他の口コミサイト同様に無料プランと有料プランが用意され、有料プランでも段階があり、当然上位になるほど口コミサイト内でも上位に掲載される仕組み。また口コミサイト内に掲載された口コミは、自院のサイト内にも貼り付けることができる。

こういった仕組みはどこにでもあるのだが、果たして法的に問題はないのだろうか。

医療広告ガイドラインは…?

医療機関の広告は厚生労働省から出されている「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)」に則らなければならない。2018年6月からは医療法が改正されたことにより、医療機関のウェブサイト、ホームページも広告という扱いになり、前述のガイドラインが適用されることになった。

医療広告ガイドラインによると、「患者その他の者の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談の広告」は禁止されている。これは患者本人ではなく伝聞に基づく体験談のことであり、患者が直接口コミを書くことは問題ない。患者本人であれば個人運営のウェブサイトやSNS、口コミサイトへの書き込みは、医療機関が費用負担や便宜を図っての掲載依頼をしていなければ問題ないとしている。

そして、今回取り上げる医療系の口コミサイトは対象が医療機関ではないため、そもそもこの医療広告ガイドラインが適用されない。ということで、医療法に基づく医療広告ガイドラインから見た場合、この口コミサイトは問題ないということになる。

ちなみに、大手口コミサイトの「エキテン」は新ガイドライン適用に合わせて医療機関の登録について、基準を変更している。

2つの法律の広告の制限では…?

医療法以外にも関連しそうな法律が2つある。「柔道整復師法」と「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」だ。前者は接骨院・整骨院、後者は鍼灸院やあん摩マッサージ院だが、ここでいうあん摩マッサージ指圧師は国家資格であり、一般的なリラクゼーションサロンやマッサージ店とは違うものだ。

2つの法律にはそれぞれ広告の制限が設けられており、ここに書かれているもの以外は広告できないとされている。

しかしながら、現状として柔道整復師法とあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律ではインターネット上のホームページやウェブサイトは広告として想定されていない。改正前の医療法の広告の定義がそのまま準用されているからだ。2018年6月現在、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師の施術についての広告は、厚生労働省でガイドライン策定の議論がされているところである。

つまり、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師の施術所について、2つの法律上の広告の制限から見た場合、サイト上の口コミは問題ないということになる。

ちなみに、この2つの法律は国家資格保持者に対するものであり無資格者が経営するマッサージ店などには適用されない。

薬機法では…?

「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」、いわゆる薬機法では医療品、化粧品、医薬部外品、医療機器についての体験談は効果効能の範囲でも許されないが、使用感なら良いことになっている。また使用感の場合は打ち消し表示、例えば「個人の感想です」という表記を追記することでなんとか掲載可能だろうとしている。

単純にサービス上の口コミ・体験談には、法律等を見る限り打ち消し表示を書かなければならないということはなさそうだ。もちろん打ち消し表示があれば、利用者に一定の説明責任を果たしたということで様々な広告に使われているようだ。しかし書き方によっては景品表示法上の問題が起こってくる。これは景品表示法のところで記載する。

薬機法から見た場合、医療品、化粧品、医薬部外品、医療機器についての口コミでなければ問題はなさそうだ。

景品表示法では…?

「不当景品類及び不当表示防止法」、いわゆる景品表示法は広告以外の表示そのものにも適用される。実演やセールストークまでも含んでいる。もちろんインターネット上の口コミも適用範囲内である。最も適用の幅が広い法律であろう。

消費者庁は2017年7月に体験談や口コミについて、読んだ人は「だいたいの人に効果がある」と思いがちだという報告書を出している。この「打ち消し表示に関する実態調査報告書」には、「被験者の数、効能が得られた人、得られなかった人の割合を明瞭に表示すべき」で場合によっては景品表示法違反になること、できれば打ち消し表示を書かなくても良いような広告にすべきであることも報告している。

口コミにウソ・大げさがあることは論外だが、悪い効果が多数なのに良い評価しか載せないということも景品表示法違反の可能性がある。となると、良いものも悪いものも載せるという姿勢が利用者のためには最適だと思われる。

そこで問題となるのが、口コミを書いたことによる投稿者への見返りだ。例えば「口コミを書くことで割引がある」、「プレゼントがある」といったことだ。こういったことをすると、余程でない限り悪い口コミを書きづらくなりはしないだろうか。万が一、直接施術者なり関係者から良い口コミのみを書くことを促されることもあるかもしれない。実際に当該サイトにはとても分かりづらい部分にではあるが、『ポジティブな口コミが多くなる傾向にある』という注意喚起なのかよくわからない記述がある。

ざっと読む限り、景品表示法では「悪い評価も掲載しなければならない」と定めているわけではない。これだけでは景品表示法上、問題はなさそうだ。

おわりに

あくまで個人的な考えになるが、口コミや体験談の掲載には悪い評価を掲載して然るべきだと考えている。誹謗中傷ではなく純粋にサービスに対するものは掲載しなければならないとまで考えている。なぜなら飲食店の「おいしい」「おいしくない」といったレベルのものではなく、下手をすれば生涯に渡る身体・健康に関わるサービスだからだ。

良い口コミだけが掲載された口コミサイトを信用し訪れた施設での施術が原因で、骨折などのケガをした場合、果たして利用者の自己責任と言えるのだろうか。口コミサイトには事故が起こる可能性を考えたうえで、口コミ掲載の基準だけでなく登録施設に対してきちんと指導する必要があるのではないかと考えている。

当該口コミサイトにきちんと指導などを行っているのか問い合わせたところ、『悪い口コミも掲載されます』という掲載基準そのままの返事だったのは残念だった。

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