それをやった真犯人は?三国志演義第2話

2017年10月1日

それをやった真犯人は?三国志演義第2話
それをやった真犯人は?三国志演義第2話

皇甫嵩・曹操の活躍で黄巾賊の張梁(ボスである張角の弟)は戦士、董卓を見限り朱儁を頼った劉備らは妖術を使う張宝(張角・張梁の弟)を打ち破った。張角は病死し、合流した孫堅を加えた朱儁らは残党も討ち果たした。

なんとか安喜県の尉になることができた劉備は領民にも慕われていたが、中央政府から見回りに来た督郵にわいろを渡さなかったことから無実の罪で罰せられそうになった。そのことを知った酒に酔った張飛は、督郵を縛り上げて打ち据えたため、劉備らは辞職して逃亡生活をすることになった。

一方中央政府では、劉宏(霊帝)が病死し、大将軍・何進によって劉弁(少帝)が即位したものの、宦官・十常侍と何進ら軍閥との対立は激化。また劉弁の弟である劉協(のちの献帝)を保護する董太后と、劉弁の母で何進の妹・何太后が対立し、宮廷は大混乱に陥った。

袁紹らは十常侍の一人・けん碩を殺したものの、他の十常侍は権力争いに勝った何太后を盾に権力を手放さなかった。そこで何進は袁紹の進言に従い、各地の諸将を都へ呼び集めることにした。

主な登場人物

  • 劉備

董卓のもとから離れたのち、朱儁と合流し黄巾賊を破る。なんとか得た安喜県の尉の地位を、張飛が督郵を打ったことで放り出して逃亡。張挙・張純の反乱を鎮圧した功績で復権する。

  • 張飛

第2回序盤の主人公。劉備にわいろを迫り、無実の罪で罰しようとした督郵を縛りつけて柳の枝で打ちまくった。この結果、劉備らとともに再び放浪することになる。

  • 関羽

董卓を殺そうとしたときは張飛を止めたが、督郵のときは張飛を支持。劉備に役職を捨てることを提案し、一緒に逃亡生活を送った。

  • 曹操

皇甫嵩のもとで張梁を破り、その功もあって何進の側近の一人として中央政府へ。宦官を早急に討滅することには反対する。

  • 袁紹

傍系とはいえ3代にわたる三公の家柄。何進の側近として宦官討滅に賛成、実行する。

  • 孫堅

黄巾賊討伐のために朱儁・劉備らと合流。黄巾残党も散々に打ち破る大活躍。

  • 督郵

人物名ではなく役職名。十常侍らの差し金でいつわって役職に就いた者を追い落とすために各地に派遣したと思われる一人。劉備にわいろを要求したが拒否され、無実の罪で罰しようとした。そのため、酔った張飛にめった打ちにされ散々な目にあった。

  • 十常侍

政治の実権を握っていた10人の宦官のこと。そのうちの蹇碩は袁紹に捕らえられそうになったところを郭勝に殺された。残りの9人は蹇碩に罪を押し付け何太后に助けを求め、董太后にもすり寄り保身を極めた。

  • 何進

大将軍。軍閥のトップ。第2話後半の主人公。妹の何太后が劉弁(皇太子)を生んだため出世した元肉の解体職人。宦官を一掃しようとするも妹の言いなりで実行できずにいる。

  • 何太后

何進の妹で、劉弁(少帝)の母。権力争いのために劉協(献帝)の母・王美人を殺害。十常侍を保護し、劉協の保護者だった董太后を追い落とした。

  • 董太后

劉協(献帝)の保護者。霊帝が死んだのを公表せず権力奪取を図るも何進と袁紹によって劉弁が即位し失敗。その後巻き返しを狙ったが何進に毒殺された。

督郵を打ったのは誰?

第2回は前半パートと後半パートで展開が大きく変わります。ここでは「正史」とは異なる安喜県での出来事について書きます。

劉備らは黄巾賊を討った功績があったものの、中央にコネがなく論功行賞から外れてしまいます。それでも何とか安喜県の尉になることができました。そして中央政府から督郵が派遣されてきます。

彼らの役割は、大した功績もないのに役に付いているものを追い落とすこと。ですが彼らも人の子、わいろ次第でどうとでもなります。

「演義」では領民に慕われていた劉備が督郵に対し、いつものように皇族の関係者であることをアピールします。が、わいろを渡さなかったために無実の罪を着せようと画策します。劉備が何度会いに行っても後の祭り、もう会おうとすらしません。

そのことを知った張飛は督郵が泊まる屋敷に飛んでいき、庭に引きずり出して縛り上げます。タイミング悪く(?)酒に酔っていたこともあり、柳の枝で何度も打ち据えます。報告を聞いた劉備が駆け付けると、関羽も張飛に同調し不遇を訴えて役を捨てて逃げることを提案。同意した劉備はそのまま逃亡生活に入りました。

ところが「正史」の注に引く「典略」では全く違う話が展開されます。

劉備は督郵がやってきたことで、自分が役からはずされると思っていました。そこで劉備は督郵を訪ねますが病気を理由に会おうとしません。怒った劉備は督郵の罪をでっちあげて宿泊する屋敷に乗り込み、督郵を庭に引きずり出すと棒で百回あまり叩きました。督郵が泣いて謝ったので劉備は叩くのも安喜県の尉もやめて逃亡しました。

ここだけ見ると督郵はわいろなどを受け取らないために事前に会わないようにしていたようにも思えますし、反対に劉備は役職にとどまろうと必死です。ですが、いざ督郵が会ってくれないとなると怒りのあまり罪をでっちあげで暴行を働くのですから、「演義」の張飛以上に質が悪い。

さすがにこんなことは、主人公であり人徳の人として描くはずの劉備にはさせられません。神となり祀られる関羽にもこの役は不可能です。このあと酒に酔っての失敗や単純で暴れん坊という描かれ方をする張飛にしかできない役回りです。

というわけで、いつの時代も大人の事情が存在して、やってもいないことをやったとされる損な人がいることは仕方のないことなのでしょうか。

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