公式サイトをWordPressでリニューアルしたら問い合わせ件数が前月比で約2倍になった話
5月の大型連休明けに勤務先の公式サイトをリニューアルしました。サーバー移管からCMSの変更まで、ここまで大規模なものは初めてでしたが、営業日の日数が少なかったにもかかわらず、4月度より問い合わせ件数が約2倍になりました。経緯などを記録のために書いておきます。

きっかけは大規模なサーバー事故
僕が広報担当部署のリーダーになった2年ほど前からリニューアルしたいという希望はありました。ただ具体的なことはなにも決まらないまま日々の業務に追われていました。そんなある日、出勤直後にチームのメンバーから「サイトが見られない。サーバーが落ちているようだ」との報告が入りました。
昨年の7月に起こったあのサーバー会社の大規模な事故でした。
月初というタイミングもあり、顧客からも「サイトが見られない。どうなっているんだ」というお叱りが殺到。加えて新規顧客からの問い合わせは当然ながら獲得できるはずもありません。様々な事情で新規獲得が難しくなっていたタイミングでの事故に、上司どころかトップから「サーバー会社を変えよう」という指示が出てしまったのです。
サーバーはさくらインターネットへ
指示が出てからすぐにサーバー会社の検討に入りましたが、2日後には2択まで絞り込んでいました。個人的にはカラフルボックスなども検討材料には入れていましたが、上層部の信頼は「老舗であること」に重きを置かれていました。そのためエックスサーバとさくらインターネットの2択となりましたが、すでに付き合いのあったさくらインターネットを打診したところ、まさかの回答が。
「北海道で地震が起こる確率が高い。石狩のデータセンターは大丈夫か」
いやそれはエックスサーバーでも同じことなのでは?という疑問はありましたが、数日後に本当に北海道で地震が起こります。かの地震で被災された皆様にはお見舞い申し上げます。そして、さくらのサーバーは無事でした。このことも後押しし、サーバーはさくらインターネットへと決まったのでした。
WordPressをメインのCMSに
時期はさかのぼり、僕が広報担当部署への移動前。実験的にWordPressの運用を公式サイト内の一部で運用を開始します。これまで使用していたムーバブルタイプよりもとっつきやすかったからで、社内での支持を得ることに成功しましたが、このせいで公式サイト内にはムーバブルタイプとWordPressが混在することになりました。これがさらにサイトリニューアルを難しくさせました。
そしてサーバー事故ののち、サーバー移管の検討を始めましたがムーバブルタイプのバージョンが古すぎたこともあり、そのままの移管が不可能ということが判明。ここから一気にサイトリニューアルへと向かうことになりました。
恥ずかしながら、サーバー事故が起こった時点では、
- ムーバブルタイプとWordPressが混在
- 常時SSL化に未対応
- スマホサイトとPCサイトで分かれていて更新2度手間
という問題を抱えていました。
これらを一気に解決するにはWordPressに統一するしかない!という方針を定めました。
驚きの見積もりとトップの方針
複数のCMSと肥大化したサイトのリニューアルには現状把握だけでも相当骨の折れる作業になることは予想できました。そして既存のWordPressテーマでは対応できるかどうかが不安でもありました。そこで外部の業者に見積もりを依頼しました。
打合せを重ねること3回。すでに大規模サーバーの事故から4か月が経過していました。そして出てきた見積もりに驚くことになります。
サイトのすべてをWordPressにそのまま移し替える作業が想定していた金額の5倍。こちらの要望を盛り込んだテーマ作成だけで想定金額の2倍。見積もりを上層部へ提出できるはずもなかったのですが、ここまでで作業自体は何も進んでいません。仕方がないのでこの見積もりを持って稟議を出せるかの相談となりました。
そこで出てきたトップの方針は、
「広報担当という部門があるのだからすべて自社で行うべし」
なんとなくの予感はあったものの、ここから始めるには1年以上かかるだろうと思える雰囲気になってしまったのでした。
不満もありつつテーマを購入
腐っていても仕方がないのでチームメンバーをなだめたりしながら、テーマをどうするかを打合せ。というか、自作できるような人材はいないので購入一択でしたが。そして業界では一番多くテーマをリリースしているところの、当時リリース間もないテーマを購入。不満がありつつも、ようやく本格的な作業が始まりました。
この時点でサーバー事故から約半年が経過していました。
作業に入ると、この会社が作るテーマにはクセがあることが見えてきます。というか不満です。
- 子テーマを作ることが前提にない
- やたら写真を要求される
- カスタム投稿タイプが追加できない
- 重い
などなど…。
とくに困ったのが、子テーマを作ることができないこと。
チームメンバーからはとにかくCSSを触りたいという要望が何度も出て、そのたびに代替案を提示して納得してもらうことに。このときほどWordPressに「追加CSS」の項目が追加されていてうれしかったことはないです。
ただAMPなど、直接書き込めないせいでプラグインで対応せざるを得ず、心ならずもプラグインが増えてしまう結果に。これはちょっと悔しかったです。
無駄な校正を排除する
今回の肝は正直ここにあるかもしれません。
これまでは何かと上層部への内容確認やレイアウト確認などに時間がかかり、さらに修正に時間がかかるといった具合になかなか前に進みませんでした。しかしながら、今回は「記事内容は変更しない」、「見た目が変わるだけ」ということで、公開前に全体を一度確認するだけでOKということを取付けました。
こうなるとしめたもので、あとは移行する記事の取捨選択と再編集、移行に専念できます。もちろん記事を書いたときの状況と現在の状況が変わっている部分もあり、サクサクというわけにはいきませんでした。それでもいちいち内容確認しなくてよいことから、チーム全体がご機嫌さんで取り組めました。
時間がかかるであろうと予想された内容の移行は、根幹部分を含めた約半分を終えたところで1か月半。ほかの業務を並行しながらでしたが、目標と定めた5月中のロールアウトが見えてきたのはこの頃でした。
そして社内発表へ
4月初旬、部署内の会議で5月中にはリニューアルしたサイトを公開できそうなことを発表。ただし、これまで蓄積されていたコンテンツが膨大なこともあり、精査と移管に時間がかかるため正確な日程の公表はできませんでした。
その後、僕が部署単位での更新方法や広報部門への記事作成依頼などの手続きを進める一方で、メンバーにはできる限りのコンテンツ移管を進めてもらいました。いよいよ大型連休も近い、というタイミングになってメンバーの一人から「連休明けのサイトリニューアルを」という切実な訴えがありました。
理由は簡単で、移管作業を進めている間にも別の部署がコンテンツを増やしていたからです。このままいけばいつまで経ってもリニューアルにたどり着けない、ということでした。そこで完了しているコンテンツの移管自体は全体の6割程度でしたが、根幹部分は完成していたため上層部に確認。大型連休明けのロールアウトという期日で内容チェックに入りました。
上層部のGOサインが出たところで、大型連休明けのリニューアルを全社に正式発表しました。
問い合わせ倍増の施策とは
さて、今回はサーバーが変わるということもあり、ドメイン移管が必要でした。部署と社員のメールアカウント設定を変更しなければならず、ドメインが浸透するまではメールの設定ばかりやっていました。
5月の終わりごろ、メンバーから「テストの件数を差し引いてもかなりの数の問い合わせになっている」と報告がありました。それほどまでに早く結果が出るとは思えなかったのですが、確かに実際の件数とほぼ一致。
「これで終わりなのか?否、始まりなのだ!」
と言い聞かせながら勢いを落とさないようにやっております。
手前みそですが、今回の目玉は
- 当然、全ページのレスポンシブ対応
- コンテンツ部分はAMP
- 「よくある質問」を作った
WordPressとテーマでできた部分もありますが、これぐらいです。
自分とチームメンバーをほめてあげたいですが、まだまだ始まったところです。